ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた

6月7日(金)公開 ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにてロードショー

小さくて愛らしいミュージカル映画

 ブルックリンで小さなレコードショップを経営するフランクは、17年続けた店を閉めようと決心した。一時は流行った店だ。今でも熱心な常連客はいるものの、インターネット時代にレコード一本の店は成り立たない。妻が事故で亡くなった後、男手ひとつで育て上げた一人娘のサムは、新学期からLAの大学で医者になる勉強をはじめるため家を出る。そろそろ潮時なのだ。元ミュージシャンの彼にとって目下唯一の楽しみは、子供の頃から音楽を教えて育てた娘との即興的なセッション。あまり乗り気ではないサムを強引に誘い、その晩ひとつの曲が生まれた。それが「ハーツ・ビート・ラウド」だ。出来上がった曲が驚くほど良かったため、フランクは娘に内緒でSpotifyにアップロード。これがSpotifyの注目曲リストに選ばれたことで、彼はすっかり舞い上がってしまう。だがサム自身はもっと冷静だった。音楽は大好き。でもそれは彼女の夢ではないのだ。

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芳華 Youth

4月12日(金)公開 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

1970年代が舞台の中国版『四十二番街』

 1970年代の中国。人民解放軍で兵士たちの慰問などを行う芸能部門「文工団」の地方部隊に、17歳の少女・小萍(シャオピン)が入隊する。ダンスの才能を見込まれて異例の時期の入隊だったが、地方出身で野暮ったい彼女は団員たちの笑いもの。他の寮生の軍服を無断で借りて写真館で写真を取ったことがばれると、「泥棒」「嘘つき」と同僚たちのいじめのターゲットになってしまう。そんな彼女に分け隔てなく親身になってくれるのは、文工団の模範生・劉峰(リウ・フォン)だけだった。だが彼は団の歌姫・丁丁(ディンディン)に密かに思いを寄せている。ある日とうとう自分の思いを彼女に打ち明けた劉峰は、その現場を他の団員に目撃され、丁丁の不正確な証言もあって実戦部隊に転属させられてしまった。ひっそりと文工団を去る劉峰を見送ったのは、小萍だけだった。間もなく小萍も退団。しかし1979年に勃発した中越戦争が、二人の運命を狂わせていく。

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ROMA/ローマ

3月9日(土)公開 全国順次公開

映画史のエポックとなる話題作

 1970年のメキシコシティ。医者の家で住み込み家政婦をしているクレオの仕事は、家事や4人の子供たちの世話をすることだ。雇い主であるアントニオ医師は研究者として世界中を飛び回り、家を留守にすることも多い。妻ソフィアとの間では口論が増えてきた。だがそんな妻を残して、アントニオは再び海外出張へ。そしてそのまま、帰ってこなくなってしまった。出張という話はでまかせで、秘かに作った愛人とリゾート地へのバカンスに出かけてしまったのだ。一方クレオは恋人フェルミンの子供を妊娠するが、妊娠を告げた途端に恋人は彼女の前から姿を消して待った。妊娠したことがわかれば、勤め先をクビになるかもしれない。意を決してソフィアに事実を告げると、彼女は親身になって家族同然に扱ってくれる。ソフィアはこの家で赤ん坊を生むことになった。同居しているソフィアの母や子供たちも、日に日にお腹が大きくなる彼女をごく自然に受け入れるが……。

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女王陛下のお気に入り

2月15日(金)公開 全国ロードショー

女官たちの権力闘争ドラマ

 18世紀初頭のイギリス。親戚のサラを頼って王宮の女給として働き出した没落貴族の娘アビゲイルは、サラが王室の女官長として絶大な権力を振るっている様子を見て衝撃を受ける。彼女は当時世界最大の権力者であった女王の懐に潜り込み、意のままに操ることができるただ一人の人間なのだ。当時のイギリスはフランスと戦争中で、議会では与野党の激しい対立が続いている。軍司令官の妻であるサラは与党寄りで、女王もその意見になびいてばかり。そんな中で野党政治家のハーレーが目に付けたのは、女給からサラを補佐する女官に取り立てられたばかりのアビゲイルだ。おとなしそうに見えて実は野心家のアビゲイルは、機会さえあればサラを追い落とし、その後釜に座ることを虎視眈々と狙っている。サラと女王を引き離したい野党政治家と、サラを宮廷から追い出したいアビゲイルの思惑は一致する。かくして宮廷内のパワーパランスが、一気に転換していくのだった。

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家族のレシピ

3月9日(土)公開 シネマート新宿ほか全国ロードショー

ラーメンもバクテーもちょっと薄味

 群馬県高崎市でラーメン店を経営していた父が亡くなり、息子の真人は遺品の中から古い写真と母の日記帳を見つける。バブル時代にシンガポールで割烹料理店を営んでいた父は、そこで出会った現地人の母と結婚した。真人もシンガポールで生まれたが、母は真人が十歳の時に病気で亡くなっている。その後、父は真人を連れて帰国し、高崎でラーメン屋を開いたのだ。真人も父と一緒に店を手伝っていたが、親子の間に会話らしい会話はなかった。真人は母の遺品を手に、シンガポールを訪ねる。現地に住む日本人ブロガーの助けもあり、真人は母の弟であるウィー叔父さんと再会することができた。真人の今回の旅の目的は、ウィーの店で出しているバクテー(肉骨茶)の作り方を習うこと。それは幼い頃、真人が母と食べた思い出の味でもある。バクテーをヒントに、新しいラーメンを作りたい。それはシンガポールと日本をルーツに持つ家族の、新しい味になるだろうか……。

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マイ・ブックショップ

3月9日(土)公開 シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

これぞ映画的な修辞法のトリック

 1959年、イギリスの小さな海辺の町。戦争未亡人のフローレンス・グリーンは、長く空き家になっていた路地裏の小さな家を購入し、住居も兼ねた書店を開こうとする。だがこれを心好く思わないのは、町の有力者であるガマート夫人。彼女は同じ空き家を芸術センターにしたいと考え、親切ごかしで書店の計画を妨害しようとするのだ。だがガマート夫人の意見を無視して書店は開店。町で唯一の書店はそれなりに客で賑わい、話題の本が売れたこともあって経営は軌道に乗ったかに思えた。だがガマート夫人は諦めない。あれこれ理由を付けてフローレンスの書店を邪魔し、彼女がそれに屈せずにいると、なり振り構わず店を潰すことを画策するようになる。孤立無援のフローレンスにとって数少ない味方になるのが、町で唯一無二の読書家だが、何十年も荒れ果てた屋敷に引きこもっている偏屈な老人エドマンドと、店の手伝いをしてくれる小学生の少女クリスティンだった。

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グリーンブック

3月1日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

古典の風格が漂う実話ベースの感動作

 1962年の秋。ニューヨークの一流ナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒をしていたトニー・リップは、店の改装でしばらく無職の身となった。そんな彼に、運転手の仕事が舞い込んでくる。雇い主は黒人ジャズ・ピアニストのドン・シャーリー。当時まだ露骨な黒人差別が行われていたアメリカ南部を巡る、8週間の演奏旅行だ。レコード会社の担当者から黒人旅行者用のホテルガイド「グリーンブック」を手渡され、トニーとドンの旅がはじまる。演奏するのは一流のクラブやコンサートホール、レストランなど。観客は金持ちの白人ばかりだ。ドンの華麗な演奏テクニックと洗練された物腰に、行く先々の観客たちは大喝采。生まれも育ちも人種も違う二人の会話はまるで噛み合わないが、トニーが妻に書く手紙をドンが手伝うようになったことから、二人の距離は急速に縮まっていく。やがてトニーは、ドンが危険で屈辱的なこの演奏ツアーを企画した意味を知るのだった。

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