草迷宮

第28回 東京国際映画祭 寺山修司生誕80年 TERAYAMA FILMS

寺山修司が描く母と子の禁断の関係

TERAYAMA FILMS

 ひとりの青年が、子供の頃に聴いた手まり歌の歌詞を訪ね歩いている。それは母が口ずさんでいた歌。その旋律はかすかに記憶の中に残っているが、歌詞の内容は忘却の彼方に消え去ってしまった。そもそも母を知らない人たちに母の歌を教えてもらおうというのだから、どこの誰を訪ねたところでこれは雲をつかむような話だ。旅の中で思い出されるのは、美しかった母の面影。父のいない家庭で、母は女手ひとつで自分を育ててくれた。家の土蔵で暮らす千代女という名の若い狂女に襲われ、大あわてで逃げ出したこともあった。そのことを話すと、母は厳しく自分を叱りつけたものだ。脱走兵と心中した少女の面影。その脱走兵の姿は、なぜか自分の父の姿とだぶるのだ。手まり歌の手掛かりは、追いかけていくと手もとから逃げ出してしまう。ひょっとして、すべてが夢だったのではないかと思うほどだ。母との思い出は、どこまでが本当なのだろう? 青年の旅は終わらない。

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