八甲田山

6月14日(金)公開 午前十時の映画祭10 FINAL

主人公たちの関係はBLである

 明治34年秋。ロシアとの戦争が目前に迫る中、寒冷地での行軍を想定した八甲田山踏破演習が計画される。参加するのは青森歩兵第五連隊と弘前歩兵第三十一連隊。二隊から同時期に演習に出発し、八甲田山の中で両者がすれ違うという想定だ。弘前連隊側の指揮を任された徳島大尉は、八甲田山を大きく迂回して東南方面から山に入る10泊200キロを超えの計画を立てる。青森連隊の指揮を任された神田大尉も小規模編成の演習を想定したが、大隊本部の山田少佐が弘前隊への対抗意識から大規模編成の演習を提案。山田少佐以下10数名が、大隊からの随行員として演習に参加することになった。翌年1月下旬。一足先に演習を開始した弘前隊は、計画ルートの要所では必ず現地案内人を雇って先に進んでいく。後発の青森隊も事前に案内人の手配をしていたが、同行した山田少佐が独断でこれを追い返し、地図とコンパスだけを頼りに雪の八甲田山に入って行くのだった。

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ホワイト・クロウ 伝説のダンサー

5月10日(金)公開 TOHOシネマズ シャンテ、シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

伝説のプリンシパル、ヌレエフの伝記映画

 1961年6月16日。ソ連の花形バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが、パリの空港で突然亡命した。一体なぜ、彼はそんな大それたことをしでかしたのか。ヌレエフは1938年生まれ。母が彼を産んだのは列車の中だった。貧しい生活の中でバレエに出会うが、名門ワガノワ・キーロフバレエ学院に編入したのは17歳の時。バレエダンサーとしての基礎を学ぶには年を取っていたが、名伯楽プーシキンと出会ってめきめきと頭角を現し、数年後にはキーロフ・バレエ団のプリンシパルに迎えられる。1961年のヨーロッパ公演は、ヌレエフにとって初の西側での公演。しばしば反抗的な態度を示す彼の参加に難色を示す人たちもいたが、ベストメンバーでの公演を目指せば彼を外すことはできない。パリに到着した彼は水を得た魚のように生き生きとし、フランスのバレエ関係者やセレブたちと活発な交流や夜遊びを行う。これは監視役のKGBを警戒させるに十分だった。

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ある少年の告白

4月19日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

実話をもとにした家族のドラマ

 アーカンソーの小さな町で牧師の息子として育ったジャレッドは、大学進学後に自分が同性愛者であることを強く自覚するようになった。だが同性愛は、信仰と両立しない大きな罪だ。思い悩んでいたジャレットだったが、ある事件をきっかけにして、家族に自分の秘密を知られてしまう。父親は教会の長老たちと相談し、息子をキリスト教系の同性愛治療施設に入所させることに決めた。その施設には、ジャレッドと同じような境遇の少年少女たちが多数入所している。施設の指導者に従って、健全な男らしい男になるための努力を始めたジャレッド。しかし間もなく彼は、この施設で行われている指導に疑問を持つようになる。繰り返し施設に入所しているという少年の異様な態度や、「施設を出たければ治ったふりをしろ」と警告する少年。一緒に入所したひとりの少年が折檻じみた「治療」を受け、その後自殺したこともショックだった。ジャレッドは施設を出ようと決意する。

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バイス

** 4月5日(金)公開 TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー**

人生は、歴史は、アイロニーに満ちている

 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。パニック状態になるアメリカ政府高官たちの中で、それまで目立たなかった一人の男が世界最大の権力を掌握する。その男の名はディック・チェイニー。通常は政権のお飾りでしかないアメリカの副大統領だが、国家の危機的状況の中で、彼は大統領さえ凌ぐ権力を手に入れる。なぜ彼には、そんなことが可能だったのか。そもそも彼は何者なのか? 1960年代。名門イェール大を中退した彼は、野心家の恋人リンに尻を叩かれて別大学を卒業し、やがて政治の世界に足を踏み入れていく。躍進のきっかけになったのは、下院議員ドナルド・ラムズフェルドのスタッフになったこと。ラムズフェルドはチェイニーを気に入り、自身がニクソン政権の要職に就いたときはチェイニーをホワイトハウスに連れて行く。ウォーターゲート事件でニクソンが辞任すると、チェイニーは史上最年少でアメリカ合衆国大統領首席補佐官に就任した。

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記者たち 衝撃と畏怖の真実

3月29日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開

食べ足りない。おかわりをくれ!

 2001年9月11日。ニューヨークの世界貿易センタービルに2機のジェット旅客機が突入し、国防総省(ペンタゴン)にも旅客機が突入した。のべ3千人近い死者を出した、アメリカ同時多発テロだ。新聞社ナイト・リッダーのワシントンD.C.支局では、この事件に関する政府の対応を取材しはじめる。アメリカ政府はただちに実行犯をイスラム系テロ組織アルカイダだと断定し、本拠地があるアフガニスタンへの対テロ作戦を開始した。しかしこれと並行して、アメリカ国内ではこの事件に対する「イラク黒幕説」が流れはじめたのだ。ナイト・リッダーの取材では、そんな事実は完全に否定されている。中東関係の専門家も、軍関係者も、捜査関係者や情報筋も、同時多発テロとイラクの結びつきはないと断言している。だがイラク黒幕説は日に日に大きくなり、マスコミも、世論も、政治家も、政府も、イラクへの軍事侵攻へと傾く。ナイト・リッダー社は孤立していた。

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ビリーブ 未来への大逆転

3月22日(金)公開予定 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

少数者を抑圧する社会常識と戦え!

 1956年秋。一児の母でもあるルース・ギンズバーグは、名門ハーバード大学のロースクールに入学した。当時同大学で法律を学ぶ女子学生はたった9人。その後コロンビア大に移った彼女は主席で卒業するが、当時のアメリカに女性を雇う法律事務所はひとつも存在しなかった。弁護士への道を閉ざされたルースは、大学の法科教授としてキャリアを築いて行く。それから10年。大学で法的な男女差別について教えているルースに、税法専門の弁護士である夫が一件の訴訟案件を持ち込んでくる。それはデンバーに住む中年の男性の訴えだった。原告は認知症を患う母親の介護のため看護師を雇ったが、その費用の税控除が認められなかったのだ。同じように認知症家族のために看護師を雇っても、独身男性以外は控除が受けられる。これは独身男性に対する法的な差別だ。ルースはこの訴訟を、法律により容認されている男女差別撤廃のための突破口にしようとするのだが……。

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ブラック・クランズマン

3月22日(金)公開 TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

実話をもとにした社会派エンタテインメント

 1970年代。コロラドスプリングスで最初の黒人警官として採用されたロン・ストールワースは、当初署内の資料室に勤務。同僚警官たちの人種差別的な扱いにも腐ることなく移動願いを出し続け、念願の潜入捜査の仕事に就くことができた。最初の仕事は、ブラックパンサーの元指導者を招いた地元黒人学生たちの集会に潜入すること。ストールワースはここで黒人指導者の言葉に感銘を受けると共に、女子大学生のパトリスと親しくなる。それからしばらく後、ロンは新聞の広告欄で、人種差別的な白人秘密結社KKKの団員募集を見つける。ロンは差別意識丸出しの白人を装って支部に電話をかけ、支部長に気に入られて集会に誘われる。だが黒人のロンが、どうやってKKKの集会に? ロンは同僚の白人刑事フリップ・ジマーマンをもう一人の「ロン」に仕立て、電話連絡は自分が、集会や会合への出席はフリップが行うという二人一役での潜入捜査を開始するのだが……。

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