キネマの神様

これは山田洋次監督版の『影武者』だ

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■あらすじ

 物心ついて以来、円山歩は父の郷直(ゴウ)にずっと悩まされている。酒好きで、ギャンブル中毒。周囲に借金してはギャンブルに注ぎ込み、不義理を重ねている。娘の歩も協力して一度全部清算したはずだが、再度得体の知れない業者から借金をしているようだ。

 そんな郷直は、かつて映画撮影所で助監督をしていたことがある。いつか監督になり、誰も観たことがないような映画を撮る日を夢見て、ベテラン監督や技師たちの下で修行の日々。そんな彼にとって気を許せる仲間と言えるのは、撮影所の映写技師・寺林新太郎(テラシン)と、撮影所前の食堂「ふな喜」の看板娘・淑子だった。

 ゴウは親友のテラシンが淑子に思いを寄せていることを知り、彼のために一肌脱ごうと決心する。だが本当のことを言えば、ゴウも淑子に好意を持っていたのだ。そして淑子も……。

 再び現代。ゴウのギャンブルと借金に業を煮やした歩と淑子は、ついに強硬手段に出た。

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草の響き

10月8日(金)公開予定 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷ほか全国順次公開

佐藤泰志の同名小説を東出昌大主演で映画化

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■あらすじ

 東京での仕事に区切りを付けて、妻と二人で生まれ故郷の函館に戻ってきた工藤和雄。だが新生活を初めて早々に、自律神経失調症になって精神科の治療を受けることになる。和雄は医者から身体を動かすことを勧められ、朝晩近所を走り始めることにした。

 高校生の小泉彰は、札幌から函館に引っ越してきたがまだ学校に馴染めない。バスケ部の同級生から海岸の岩から海に飛び込む度胸試しに誘われたが、じつは彰はまるきりの金槌だ。近くのプールで泳ぐ練習を始めたとき、自分と同じ年頃の高田弘斗に声をかけられる。「俺が泳ぎを教えるから、かわりにスケボー教えてよ」。こうして二人は友達同士になった。

 和雄は走ることにのめり込み、それが生活の中心になる。何があっても朝晩は必ず走る。走る距離は伸び、タイムは縮むのも面白い。仕事は大学食堂で食器洗いのアルバイトを見つけた。自分も仕事をしている妻の純子は、そんな生活に疲れ始めていた。

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83歳のやさしいスパイ

7月9日(金)公開 シネスイッチ銀座、シネマカリテほか全国順次公開

真面目で優しい素人探偵の大冒険

■あらすじ

 チリの新聞に奇妙な求人広告が掲載される。「80~90歳の男性募集。経歴・資格不問」。多くの高齢男性が応募する中、雇われたのはセルヒオ・チャミーという83歳の老人。雇用主のロムロは興信所を経営しており、セルヒオには高齢者養護施設への潜入調査員としての仕事が与えられる。

 ロムロに調査を依頼したのは、施設に入居しているソニアの家族。セルヒオは施設に新たな入居者として入り込み、ソニアの周辺を調べて報告しなければならない。

 だが普通の老人をスパイに仕立てるのは、並大抵の苦労ではない。小型カメラや隠しカメラを用意して使い方をレクチャーし、スマホでの電話連絡方法をマスターさせねば仕事にならない。だがもともとまじめな性格のセルヒオは、これらを無事にマスター。施設には体験入居の名目でもぐり込むことに成功する。セルヒオは施設の情報を得るため、ソニアや周囲の人たちと打ち解けて話をするようになるが……。

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かそけきサンカヨウ

10月15日(金)公開予定 テアトル新宿ほか全国ロードショー

言葉にならない思いを丁寧に描いた青春ドラマ

■あらすじ

 高校生の国木田陽は、もうずいぶん長く母親のいない父娘二人暮らしをしている。ある日、父の直から「恋人ができた」と打ち明けられる。それから間もなく父は再婚し、新しい母となった美子と幼い妹のひなたが一緒に暮らすようになった。

 陽と同じ美術部に所属している清原陸は、心臓の病気があって中学まで打ち込んでいたバスケを卒業と同時に辞めた。父は仕事で世界中を飛び回り、家では母と父方の祖母の三人で暮らしている。ある日、陸は陽に誘われてあるギャラリーで開催されている個展を訪れるのだが……。

 それは陽の母・佐千代の個展だった。画家として活躍している佐千代は、高校生になった陽の顔を見ても我が子だとは気付かない。そのことにショックを受けて、陽はギャラリーを飛び出してしまう。母はまだ幼い自分を置き去りにして家を出てしまった。自分は母に愛されていなかったのではないだろうか? 陽はそんな思いに苦しめられていた。

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ミッドナイト・ファミリー

1月16日(土)公開 ユーロスペースほか全国公開

いろいろと危うい民間救急隊の日常

 オチョア家の仕事は民間救急隊だ。事故があった、事件があった、病人が出た、ケガ人がいると聞けば、一目散に現場に駆けつけて、患者の救護と病院への搬送を行う。東京23区に匹敵する人口900万人のメキシコシティに、公営の救急車はたった45台しかないのだ。その不足を補うために、オチョア家のような民間救急隊が患者を病院に運ぶのだが、彼らの収入はその見返りとして患者から受け取る謝礼のみ。だが民間救急隊は行政未公認のもぐり稼業。搬送した患者や家族が「金は払わない」と言えば、それ以上の無理な取り立てはできない。患者とトラブルを起こせば、警察に逮捕されかねないのだ。民間救急隊の競争は激しい。警察無線を傍受したり、知り合いの警官からの電話連絡で現場に駆けつける必要がある。だがその患者が、料金を支払ってくれるとは限らない。メキシコシティには貧しい人も多いからだ。オチョア家の人々は、もう何日も収入が無い状態だった。

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マリッジ・ストーリー

ローラ・ダーンのアカデミー助演女優賞受賞作

 演出家のチャーリー・バーバーと妻のニコールは、ニューヨークの演劇界では有名なおしどり夫婦だった。だった、と過去形になるのは、二人が目下離婚に向けて準備を進めているからだ。もともとニコールは、ハリウッドの芸能一家育ち。若い頃はティーン向け映画で活動していたが、チャーリーとの結婚以降ずっとニューヨークが活動拠点だった。その彼女に、ハリウッドから出演オファーが来たのだ。短期の仕事だと思ったが、ニコールはこれを機会に生活拠点をハリウッドに移したい。一方チャーリーは長年活動を共にしてきた劇団の仲間たちと、いよいよブロードウェイに進出しようという大切な時期。とてもではないが、このタイミングで西海岸に生活拠点を移すことなどできない。これをきっかけに、長年に渡って夫婦の中で積み重なってきた互いの不満や問題が表面化する。当初話し合い離婚を望んでいた二人だが、ニコールが弁護士を雇ったことから話がこじれていく。

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his

恋人同士が出した人生の結論は?

 高校生時代に知り合って恋人同士になった井川迅と日比野渚。だが迅の大学卒業を間近にして、渚は突然別れを切り出して離れて行った。それから8年。都会を離れた田舎町で自給自足に近い生活をしている迅のもとに、突然渚が現れる。しかも小さな女の子・空を連れて。彼女は渚の子供なのだという。プロサーファーを目指して海外に渡った渚は、そこで通訳の日本人女性と知り合って結婚。娘が生まれたが、今は離婚に向けて別居中なのだという。「どうして今さら戻ってくるんだよ。やっと忘れられそうだったのに」「俺にとって、やっぱり迅は特別なんだ」。ぎこちなく、離れ離れだった時間を取り戻していく二人。そこに渚の妻・玲奈がやってきて、強引に空を連れ去ってしまう。渚と玲奈は、離婚後の空の親権を争っているのだ。社交的な渚と同居することで、迅の生活も少しずつ変わっていく。地域の人たちと触れあう機会も増えた。渚も新しい仕事を見つけて働きだす。

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家族を想うとき

2019年12月13日(金)公開 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

普通の人々を縛る見えないシステム

 長年建築労働者として働いてきたリッキーは、妻や子供たちに少しでも余裕のある暮らしをさせてやりたいと一念発起し、地元の運送会社と配達ドライバーの契約を結ぶ。仕事用に車を購入するのは痛い出費だが、頭金は訪問看護の仕事をしている妻アビーの車を売って用立てた。しかし車を手に入れたことで、リッキーは一国一城の主だ。仕事は朝7時から夜9時まで続く14時間勤務。仕事はきついが、家族のことを思えばがんばれる。だが家族のために始めた仕事なのに、家族と過ごす時間はほとんどない。とくに長男が反抗的で手が付けられない。運送会社の担当者は、ことあるごとに契約ドライバーから罰金を取り立てる。「あなたは従業員じゃない。独立事業者だ。互いに対等な立場で交わした契約がある。問題が起きてもうちは知らない。それはあなたの自己責任だ」。配達の仕事をはじめてから、リッキーの家族は少しずつ歯車が噛み合わなくなってくるのを感じていた。

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男はつらいよ50 お帰り 寅さん

12月27日(金)公開 全国ロードショー

満男と泉の物語にピリオドを打つ完結編

 脱サラして小説家になった諏訪満男は、病気で亡くした妻の七回忌法要のため実家の柴又に戻ってくる。久しぶりに懐かしい顔が集まって思い出すのは、以前はこうした場の中心になっていた伯父さんのことだ。テキ屋をしていた寅次郎伯父さんは、惚れっぽくって、人情家で、面倒見がいい親分肌で、でもひがみっぽくて、すぐ怒って、いつも全国をふらふら飛び回って、家族に心配ばかりかけていた。でも満男はそんな伯父さんが大好きだったのだ。書店で行われたサイン会で、満男は久しぶりに懐かしい人に再会する。高校時代に付き合っていた初恋の相手・泉だ。泉は20年ほど前にヨーロッパに渡り、現地で家庭を持ち、今は国連関連の職員として世界中を飛び回っている。満男は泉を神保町のジャズ喫茶に連れて行く。店の女主人は、伯父さんの恋人だったリリーさんだ。「リリーさんはどうして伯父さんと結婚しなかったの?」。満男と泉の思い出をたどる旅は続いていく。

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喜劇 女は度胸

6月21日(金)公開 ミッドランドスクエアシネマ

『男はつらいよ』シリーズの双子の兄弟

 蒲田の町工場で工員として働いている学は、真面目だが不器用な青年だ。仲間たちに連れられて週末の盛り場に乗り出しても、早々に仲間とはぐれてひとりぼっち。そんな学ぶに声をかけてきたのが、大手四ツ星電器で工員をしている愛子だった。二人は不器用な交際をはじめ、一途な学はやがて彼女との結婚を意識するようになる。だがそんな彼を驚愕させる事件が起きる。学が愛子にプレゼントしたゲーテの詩集を、遊び人の兄・勉吉が持っていたのだ。「これは馴染みのコールガールに借りたのよ。美人だぜ。あっちの仕事はアルバイトで、昼間は四ツ星電器に勤めてるんだ」。なんということだ。あの愛子が、学の知らないところで娼婦の仕事をしているのだ。しかも遊び人の兄と馴染みで、もう何度もそういうことをしている。学は愛子とのデートで彼女にこのことを問いただそうとするが、それは学の疑惑をますます深めるだけだった。学は彼女と別れようとするが……。

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