長いお別れ

5月31日(金)公開 全国ロードショー

山崎努の熱演に目が釘付け

 父・昇平の70歳の誕生日を祝うため、久しぶりに実家に集まった家族4人。母の曜子は専業主婦で、長女・麻里は結婚して今はアメリカ暮らし。次女の芙美は惣菜店で働きながら、いつか自分のカフェを開くために準備をしている。だが姉妹はこの日、父の認知症が始まったことを母から知らされて驚く。長年教員を勤め、最後は校長をしていた厳格な父。本を読むのが好きで、今も読書を欠かさない父がボケているだなんて。にわかには信じられない話だったが、芙美はその日、父の言動が明らかにおかしいことに気がついた。それがはじまり。父の認知症は少しずつ、しかし確実に進行していった。はじめのうちは、調子の良い時と悪い時がある。だが少しずつ調子の悪い時が多くなり、自分の周囲のあらゆる物事を忘れていく。家族のことを忘れ、自分のいる場所がわからなくなり、やがて言葉も通じにくくなっていく。しかしそんな父を、家族は温かい目で見守り続けるのだ。

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万引き家族

6月8日(金)公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

是枝裕和監督のカンヌ映画祭パルムドール受賞作

 路地の隙間から、東京スカイツリーが見える東京下町。高層マンションと昔ながらの小さな平屋が混在するこの地域に、柴田家の人々は肩寄せ合うようにして暮らしている。年金暮らしの祖母を中心に、小さな家に夫婦と息子、叔母が同居する暮らし。だがこの一家には、あまり大っぴらには言えない秘密の稼業がある。彼らは生活費の不足を、万引きで補っているのだ。ある冬の夜、近くのスーパーでその日の「仕事」を済ませた帰り道のこと。父の治と息子の祥太は、近くのアパートの廊下で一人震えている幼い女の子を見つける。「コロッケ食べるかい?」と声をかけた治は、結局その子を自分たちの家に連れて帰ってしまう。「ゆり」と名乗ったその少女には、体中に虐待のあとがあった。翌日女の子を元のアパートに連れ帰ろうとした夫婦は、部屋から聞こえてくる「子供なんて欲しくなかった」という怒鳴り声を聞いて、どうしてもゆりを帰すことができなくなってしまう。

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ブルゴーニュで会いましょう

11月19日(土)公開 Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

ぶどうとワイン作りを通して再生していく家族

ブルゴーニュで会いましょう

 シャルリはフランスでも有数のワイン評論家。毎年発行される彼のワインガイドの評価次第で、ワイナリーの経営が左右されるほどの強い影響力を持っている。その最新版の出版パーティーで、彼は魅力的な女性と知り合って一夜を共にする。彼女は彼に忘れがたい印象を残すが、その後起きた大事件でこの件は後まわしになってしまった。シャルリの実家であるワイナリーが、経営不振で人手に渡りそうなのだ。銀行はシャルリの父の経営にサジを投げたが、別の有望な経営者が見つかるなら1年間は競売にかけるのを猶予するという。父やワイナリーの仕事を嫌って家を飛び出したシャルリだが、ことここに至っては逃げようがない。シャルリ自身がワイナリーの後継者として、ワイン造りをするしか道はない。とりあえず1年で窮地を抜け出さねば。そんな彼の前に現れたのは、隣のワイナリーの跡取り娘ブランシュ。だが彼女こそ、あの日シャルリと一夜を過ごした女性だった。

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この世界の片隅に

11月12日(土)公開予定 テアトル新宿ほか全国ロードショー

それでも人は今日を生きるのだ

この世界の片隅に

 昭和19年2月。広島の江波で生まれ育った浦野すずは、呉の北條周作に嫁いで北條すずになった。物資や食糧の不足はあっても、この時点で戦争はまだどこか遠い世界の出来事だ。警報は鳴っても空襲はない。それより問題なのは、北條家に義姉の径子が幼い娘の晴海を連れて出戻って来たこと。はっきりとした物言いの径子と、おっとり型のすずは性格がまるで正反対。径子はことあるごとに、すずにイヤミめいた口のきき方をする。だがこうした日常の些事も、逼迫してくる戦時下の生活の中に埋もれていくのだ。呉の上空に飛来した敵機が、気まぐれな機銃掃射をして行くのに似ている。花街の遊女リンとの出会いや、幼なじみの水兵・哲との再会も、そうした些細な日常の一コマに過ぎない。しかし昭和20年春からは、軍港である呉もしばしばひどい空襲を受けることになる。5月には、夫の周作が海軍軍人に任官。義父の円太郎は、広海軍工廠の空襲で行方不明になった。

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空人(くうじん)

2016年1月16日(土)公開予定 新宿K’s cinema

戦争が生んだ傷を抱えて生きる

空人

 天童市の若松寺にある墓を、ひとりの老人が訪れる。彼の名は橋本勝雄。たずねた先は、同じ航空隊で世話になった先輩航空兵・阿部の墓だ。阿部は特攻で出撃し、そのまま帰らぬ人になっている。彼だけではない。同じ部隊で生き残ったのは、勝雄ただひとりしかいないのだ。念願の墓参を済ませて帰ろうとした勝雄を、ひとりの女性が呼び止める。「清水さんですか?」。清水というのは勝雄の旧姓だ。彼女は阿倍の妹・静子の娘で紀和。伯父の手紙や既に亡くなった母の話などを通じて、彼のことを知っていたのだ。誘われるままに阿部家を訪問した勝雄は、そこで長年胸に秘めていた自分と阿部との約束について語る。特攻出撃の前日に熱を出し、自分の出撃が取りやめになって生き残ったこと。その欠員を埋めるため、阿部が身代わりのように出撃したこと。出撃前の阿部が、妹の静子と勝雄が結婚することを望んでいたこと……。だが勝雄は、阿部の死に責任を感じていた。

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母と暮せば

12月12日(土)公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

戦争は母からすべてを奪った

母と暮せば

 昭和20年8月9日。長崎に投下された原爆で、長崎医科大学の学生だった福原浩二は死んだ。それから3年目の夏。母の伸子は浩二の婚約者だった町子に、自分はようやく浩二の死を受け入れたと語る。一片の骨も、一片の服の切れ端も残さず、原爆の炎の中で消えてしまった息子。だめだとわかっていても、ひょとしたらまだ生きているのではないかと希望を捨てられずにいた。だがその希望はもう捨てる。浩二は死んだのだ。病気で早くに夫を亡くし、上の息子も戦死し、次男の浩二も原爆に奪われ、仏壇には家族3人の遺影が並ぶ。伸子は家の中にひとりきりだ。だがその夜、伸子のもとに死んだ浩二がひょっこりと戻ってくる。「母さんは変わりない?」「わたしは大丈夫。あなたは元気なの?」「はははは。母さん、僕はもう死んでるんだよ」。浩二はその後もたびたび伸子の前に現れ、母の暮らしの心配、昔の思い出話、残された町子への思いなどを語り合うようになる。

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三日月

第28回 東京国際映画祭 アジアの未来

断食明けの新月を探す父と息子の旅

Mencari Hilal

 市場で食料品店を営むマフムドは、小さなモスクの長老も務める敬虔な信仰の持ち主だ。だが何かにつけて「正しい信仰に従う生き方」を説く態度が、時として周囲と軋轢を生み出すこともあった。息子のヘリが家を出て海外のボランティア活動に参加しているのも、おそらくは父の態度に反発してのことに違いない。マフムドは古き良き時代を懐かしむ。かつては自分の周囲に、同じ信仰に燃える仲間たちがいた。ラマダーン明けの新月(ヒラル)を見るために、仲間たちと決められた場所まで旅をしたものだ。死ぬ前にもう一度、あの旅をしてみたい。いや、ぜひ旅をするべきだ。マフムドが旅支度をした同じ頃、家には息子のヘリがひょっこり戻ってくる。パスポートの更新手続きのために、必要な書類を取りに来たのだ。だがラマダーン中は役所の手続きも遅くなる。父の体を心配する姉は、ヘリに対して父の旅に同行するよう言いつける。ヘリは嫌々ながらそれに従うが……。

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告別

第28回 東京国際映画祭 アジアの未来

娘が留学から帰国すると父は末期がんだった

A Simple Goodbye

 シャンシャンの父は肺がんだ。父と母は長く別居しているが、娘のシャンシャンが留学先のイギリスから戻ってきたとき、父は自宅療養のために退院して母の家と実家の間を行ったり来たりしている。周囲は父の体調を気にしてあれこれ気をつかっているのに、父は相変わらずマイペースに好き勝手な生活だ。タバコは吸う。酒は飲む。友人と集まって麻雀はする。食が細くなった父のために母がせっせと料理を作っても、少し箸を付けただけで放り出してしまう。今では栄養のほとんどを、点滴で補給していることさえあるのだ。父の命はもう長くないだろう。本人もそのことをよくわかっているはずだ。だが誰もそのことを口にしない。シャンシャンは以前から父との折りあいが悪く、今回の帰国も父の体調を気づかってのものではない。彼女はイギリスである問題を抱え、それから逃げてきたのだ。シャンシャンを追うように、イギリスからは問題の原因を作った恋人も帰国する。

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はなちゃんのみそ汁

12月19日(土)先行公開予定 テアトル新宿、福岡県内
1月9日(土)公開予定 全国ロードショー

母はまだ幼い娘にみそ汁作りを教えた

はなちゃんのみそ汁

 新聞記者の安武信吾は、取材で知り合った音大生の千恵に一目惚れ。猛アタックの末に交際がスタートするが、互いに結婚を意識した頃に見つかったのが彼女の胸のしこりだった。医者の診断は乳ガン。千恵は一方の乳房を全摘することに加えて、長く続く抗ガン剤治療の影響で子供は産めないかもしれないと宣告される。だがそれでも信吾の決意は変わらなかった。ふたりは結婚。しばらくして、ふたりとも諦めていた子供も授かった。妊娠出産はガン再発のリスクを高めるが、夫婦は周囲の応援もあって出産を決意し、無事産まれた女の子は「はな」と名付けられる。その直後、千恵の病気が再発した。病院でのホルモン療法に加え、信吾と千恵は難病に効果があるという食事療法にもチャレンジ。こうした努力が功を奏したのか、千恵の身体からはガンが消えた。夫婦と子供ひとりの幸せな暮らしは数年続いた。千恵は4歳になったはなに、少しずつ料理を教えはじめるのだった。

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ハッピーエンドの選び方

11月公開予定 全国ロードショー

自分の人生の最後を自分らしく生きる!

ハッピーエンドの選び方

 エルサレムの老人ホームに、夫婦で入居しているヨヘスケルとレバーナ。夫のヨヘスケルはアマチュアの発明家で、人々の役に立ったり立たなかったりする道具を日々発明している。だが夫婦にとって目下最大の関心は、友人ヤナの夫マックスが病気の末期症状で苦しんでいることだ。回復見込みのないまま、ただ苦痛でのたうち回っている姿は見るに忍びない。もはや医者が処方する痛み止めも効果がなく、あとは体力が徐々に失われて命が尽きるのを待つばかりなのだ。ヨヘスケルは見るに見かね、苦痛なしに安楽死できる自殺装置を作り出す。マックスはこの装置を使って、友人たちに見守られながらあの世に旅立った。だがこの話を聞きつけて、ヨヘスケルのもとには「装置を使って楽にしてくれ」という依頼が次々舞い込むようになる。妻のレバーナは「結局は人殺しだ」と非難するのだが、間もなく認知症がひどくなり、彼女自身が別の施設に移動しなければならなくなる。

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