ハクソー・リッジ

6月24日(土)公開 TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー

地獄の戦場で、戦わない男は英雄になった

 1945年4月。激戦が続く沖縄のアメリカ軍前線基地に、ひとりの衛生兵がやってくる。名前はデズモンド・ドス。彼が同じ部隊の仲間たちから変わり者扱いされているのは、菜食主義のやせっぽちだったからではない。彼はセブンスデー・アドベンティスト教会の敬虔な信徒で、十戒の「殺すな」の掟を守るために銃を取らないことを信条としていたのだ。これが原因で訓練中には上官のしごきや周囲のいじめを受けることもあったが、「殺すのではなく、命を救いたい!」という決意は固く、こうして衛生兵として戦場にやって来ている。だが沖縄での戦いは、それ以前にデズモンドが経験してきたグアムやレイテの戦いとは比較にならない凄惨なものとなった。戦いの舞台は「ハクソー・リッジ」と呼ばれる高い断崖の上にある日本軍陣地。これを攻略しない限り、部隊は釘付けのままだ。激しい戦闘の中で、デズモンドは戦場に取り残された兵士たちを救出するため走り出す。

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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

2016年12月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテにて先行公開
1月14日(土)より全国公開

テロと戦うことでテロに屈服するという逆説

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

 イギリス軍諜報部のキャサリン・パウエル大佐は、多くの犠牲を払いながら長年追い続けていたテログループ幹部の居場所を突き止めた。場所はケニアのナイロビだ。現地の軍特殊部隊と協力して捕獲作戦を決行しようとした矢先、テロリストたちはグループの支配地域にある別の隠れ家に移動してしまう。敵の支配地域で特殊部隊を動かすことは出来ない。だがこのチャンスを逃せば、次にいつ彼等を見つけられるかわからないのだ。パウエル大佐と国防省のベンソン中将は、無人機を使ったミサイル攻撃を主張する。だがロンドンの会議室に集まった政府の閣僚たちは、この計画に難色を示す。捕獲作戦がミサイル攻撃による暗殺に変更された場合、法的な妥当性や政治的なリスクが未検証だったからだ。政治家たちは攻撃に怖じ気づき、決断を迫る中将の前で責任を押し付け合う。その頃アメリカのネバダ州にある米軍基地では、無人機の新人パイロットが攻撃命令を待っていた。

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この世界の片隅に

11月12日(土)公開予定 テアトル新宿ほか全国ロードショー

それでも人は今日を生きるのだ

この世界の片隅に

 昭和19年2月。広島の江波で生まれ育った浦野すずは、呉の北條周作に嫁いで北條すずになった。物資や食糧の不足はあっても、この時点で戦争はまだどこか遠い世界の出来事だ。警報は鳴っても空襲はない。それより問題なのは、北條家に義姉の径子が幼い娘の晴海を連れて出戻って来たこと。はっきりとした物言いの径子と、おっとり型のすずは性格がまるで正反対。径子はことあるごとに、すずにイヤミめいた口のきき方をする。だがこうした日常の些事も、逼迫してくる戦時下の生活の中に埋もれていくのだ。呉の上空に飛来した敵機が、気まぐれな機銃掃射をして行くのに似ている。花街の遊女リンとの出会いや、幼なじみの水兵・哲との再会も、そうした些細な日常の一コマに過ぎない。しかし昭和20年春からは、軍港である呉もしばしばひどい空襲を受けることになる。5月には、夫の周作が海軍軍人に任官。義父の円太郎は、広海軍工廠の空襲で行方不明になった。

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空人(くうじん)

2016年1月16日(土)公開予定 新宿K’s cinema

戦争が生んだ傷を抱えて生きる

空人

 天童市の若松寺にある墓を、ひとりの老人が訪れる。彼の名は橋本勝雄。たずねた先は、同じ航空隊で世話になった先輩航空兵・阿部の墓だ。阿部は特攻で出撃し、そのまま帰らぬ人になっている。彼だけではない。同じ部隊で生き残ったのは、勝雄ただひとりしかいないのだ。念願の墓参を済ませて帰ろうとした勝雄を、ひとりの女性が呼び止める。「清水さんですか?」。清水というのは勝雄の旧姓だ。彼女は阿倍の妹・静子の娘で紀和。伯父の手紙や既に亡くなった母の話などを通じて、彼のことを知っていたのだ。誘われるままに阿部家を訪問した勝雄は、そこで長年胸に秘めていた自分と阿部との約束について語る。特攻出撃の前日に熱を出し、自分の出撃が取りやめになって生き残ったこと。その欠員を埋めるため、阿部が身代わりのように出撃したこと。出撃前の阿部が、妹の静子と勝雄が結婚することを望んでいたこと……。だが勝雄は、阿部の死に責任を感じていた。

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母と暮せば

12月12日(土)公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

戦争は母からすべてを奪った

母と暮せば

 昭和20年8月9日。長崎に投下された原爆で、長崎医科大学の学生だった福原浩二は死んだ。それから3年目の夏。母の伸子は浩二の婚約者だった町子に、自分はようやく浩二の死を受け入れたと語る。一片の骨も、一片の服の切れ端も残さず、原爆の炎の中で消えてしまった息子。だめだとわかっていても、ひょとしたらまだ生きているのではないかと希望を捨てられずにいた。だがその希望はもう捨てる。浩二は死んだのだ。病気で早くに夫を亡くし、上の息子も戦死し、次男の浩二も原爆に奪われ、仏壇には家族3人の遺影が並ぶ。伸子は家の中にひとりきりだ。だがその夜、伸子のもとに死んだ浩二がひょっこりと戻ってくる。「母さんは変わりない?」「わたしは大丈夫。あなたは元気なの?」「はははは。母さん、僕はもう死んでるんだよ」。浩二はその後もたびたび伸子の前に現れ、母の暮らしの心配、昔の思い出話、残された町子への思いなどを語り合うようになる。

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フル・コンタクト

第28回 東京国際映画祭 コンペティション

絶対に安全な戦争が兵士の心を蝕む

Full Contact

 アメリカ軍は中東で遠隔操作の無人機(ドローン)を使って、敵対するテロ組織の要人や施設を攻撃している。アイヴァンはその無人機のパイロットだ。勤務する空軍施設はネヴァダ州の砂漠地帯にあり、彼は宿舎から施設まで通い、通信で指示を受けてターゲットを攻撃する。アイヴァンは相手を攻撃できるが、相手がアイヴァンを攻撃することはない。絶対安全な場所から、彼はミサイル発射のボタンを押すだけなのだ。だがこの仕事が、彼の心を少しずつすり減らしていく。顔からは、喜怒哀楽の表情が消えてしまった。ある日アイヴァンは、テロ組織の訓練施設を攻撃する命令を受ける。その時彼はカメラ越しに、子供の姿を見た。だが命令は施設の破壊だ。アイヴァンはミサイル発射のボタンを押した。何度も何度もボタンを押し続けた……。だがそれからしばらくして、彼が攻撃した施設はテロリストの訓練施設ではなく、子供たちが通う学校だったことがわかるのだった。

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地雷と少年兵

第28回 東京国際映画祭 コンペティション

戦後の地雷除去に駆り出された少年兵たち

Land of Mine

  1945年5月。ドイツが連合国に降伏して数日後。デンマークの海岸地帯に捕虜になったドイツ軍の少年兵たちが集められた。若い将校は少年たちに言い放つ。「ドイツがわが国の海岸線に敷設した地雷は200万個。これをお前たちの手で撤去してもらう。作業が終わるまで帰国は許さん!」。少年たちは短期間で地雷撤去の訓練を受けるが、本物地雷を使った特訓では早くも犠牲者が出る。生き延びて作業現場の砂浜に送り込まれたのは10数名。現場監督のラスムッセン軍曹はドイツ人に対して激しい憎しみを抱いており、相手がまだあどけない顔の少年兵であっても情け容赦なく作業を命じる。少しでも手元が狂えば地雷は炸裂して命がない。食料の配給もほとんどなく、このままでは地雷で爆死するか餓死するかしかないだろう。そんな中で、少年兵のひとりが作業中に地雷を炸裂させて両腕を吹き飛ばされる。これが最初の犠牲者。だが地雷が残る限り作業は終わらない。

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