バイス

** 4月5日(金)公開 TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー**

人生は、歴史は、アイロニーに満ちている

 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。パニック状態になるアメリカ政府高官たちの中で、それまで目立たなかった一人の男が世界最大の権力を掌握する。その男の名はディック・チェイニー。通常は政権のお飾りでしかないアメリカの副大統領だが、国家の危機的状況の中で、彼は大統領さえ凌ぐ権力を手に入れる。なぜ彼には、そんなことが可能だったのか。そもそも彼は何者なのか? 1960年代。名門イェール大を中退した彼は、野心家の恋人リンに尻を叩かれて別大学を卒業し、やがて政治の世界に足を踏み入れていく。躍進のきっかけになったのは、下院議員ドナルド・ラムズフェルドのスタッフになったこと。ラムズフェルドはチェイニーを気に入り、自身がニクソン政権の要職に就いたときはチェイニーをホワイトハウスに連れて行く。ウォーターゲート事件でニクソンが辞任すると、チェイニーは史上最年少でアメリカ合衆国大統領首席補佐官に就任した。

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記者たち 衝撃と畏怖の真実

3月29日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開

食べ足りない。おかわりをくれ!

 2001年9月11日。ニューヨークの世界貿易センタービルに2機のジェット旅客機が突入し、国防総省(ペンタゴン)にも旅客機が突入した。のべ3千人近い死者を出した、アメリカ同時多発テロだ。新聞社ナイト・リッダーのワシントンD.C.支局では、この事件に関する政府の対応を取材しはじめる。アメリカ政府はただちに実行犯をイスラム系テロ組織アルカイダだと断定し、本拠地があるアフガニスタンへの対テロ作戦を開始した。しかしこれと並行して、アメリカ国内ではこの事件に対する「イラク黒幕説」が流れはじめたのだ。ナイト・リッダーの取材では、そんな事実は完全に否定されている。中東関係の専門家も、軍関係者も、捜査関係者や情報筋も、同時多発テロとイラクの結びつきはないと断言している。だがイラク黒幕説は日に日に大きくなり、マスコミも、世論も、政治家も、政府も、イラクへの軍事侵攻へと傾く。ナイト・リッダー社は孤立していた。

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ふたりの女王 メアリーとエリザベス

3月15日(金)公開 TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

スコットランド女王メアリーの悲劇

 1561年8月。幼くしてスコットランド女王として即位しながらフランスに嫁いでいたメアリーが、夫の死によって祖国スコットランドに帰国する。これを脅威と感じたのが、隣国のイングランドだ。女王エリザベスは父王ヘンリー8世が母と離婚したため庶子の身分であり、その王位継承には疑義を持つ者も多かった。エリザベスの王位継承が無効なら、メアリーはイングランドの正当な王位継承者にも成り得る。熱心なカトリック信徒であるメアリーの帰国により、宗教改革後にプロテスタント優位で決着が付きそうだったイングランドやスコットランドに、再び深刻な宗教対立の嵐が巻き起こる心配もあった。だがこうした政治的思惑は、メアリー本人の思いとはまったく別のものだった。彼女が願いは、祖国スコットランドやイングランドの人々が、安心して暮らせることだけ。だがその思いとは逆に、両国の対立は水面下で激しく火花を散らし、深刻の度合いを深めていく。

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女王陛下のお気に入り

2月15日(金)公開 全国ロードショー

女官たちの権力闘争ドラマ

 18世紀初頭のイギリス。親戚のサラを頼って王宮の女給として働き出した没落貴族の娘アビゲイルは、サラが王室の女官長として絶大な権力を振るっている様子を見て衝撃を受ける。彼女は当時世界最大の権力者であった女王の懐に潜り込み、意のままに操ることができるただ一人の人間なのだ。当時のイギリスはフランスと戦争中で、議会では与野党の激しい対立が続いている。軍司令官の妻であるサラは与党寄りで、女王もその意見になびいてばかり。そんな中で野党政治家のハーレーが目に付けたのは、女給からサラを補佐する女官に取り立てられたばかりのアビゲイルだ。おとなしそうに見えて実は野心家のアビゲイルは、機会さえあればサラを追い落とし、その後釜に座ることを虎視眈々と狙っている。サラと女王を引き離したい野党政治家と、サラを宮廷から追い出したいアビゲイルの思惑は一致する。かくして宮廷内のパワーパランスが、一気に転換していくのだった。

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ファースト・マン

2月8日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

カリスマ宇宙飛行士の孤独な世界

 1961年。NASAのテストパイロットであるニール・アームストロングは、ロケット機X-15のテスト飛行中、制御できなくなった機体を何とか着陸させることに成功した。だが現在彼を悩ませているのは仕事のことではなく、幼くして脳腫瘍を患う娘カレンのことだ。家族の祈るような願いと治療のかいもなく、カレンは2歳半の短い生涯を閉じる。このことは、ニールの心を深く傷つけることになった。彼はその後ジェミニ計画の飛行士に応募して、苛酷な訓練の日々を送るようになる。1966年。ニールが船長を務めるジェミニ8号は、無人衛星とのドッキングに成功。一時は操作不能になる危機的な状況となったが、ニールの的確な処置で無事帰還を果たした。その翌年、悲劇的な事故が宇宙飛行士たちを襲う。発射台のアポロ1号が火災事故を起こし、飛行士3人が死亡したのだ。それでも計画は進んで行く。ニールは月着陸を目指すアポロ11号の船長に選ばれた。

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パウロ 愛と赦しの物語

11月3日(土)公開 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

ひたすら地味で、暗く、つまらない

 西暦67年のローマ。ネロ帝は数年前に起きた大火の責任を、当時帝国内に目立ちはじめたキリスト教徒になすりつけ、市内では大規模なキリスト教徒の弾圧が行われていた。ローマ滞在中の使徒パウロも、放火の首謀者として囚われの身。だが今や処刑を待つばかりの彼を、かつて旅を共にした医者ルカが訪ねてくる。最後にパウロの旅と信仰の記録を聞き取って書き写し、迫害の中で苦しむ各地のキリスト教徒たちに伝えるためだ。看守に賄賂を渡し、命がけでパウロの牢獄を訪ねるルカ。だがこのことは、獄舎の長官であるマウリティウスにもすぐ知られてしまう。彼には娘があり、今は重い病に苦しんでいる。だが「ルカは優秀な医者だ。彼なら娘を治せる」と言うパウロの言葉に、マウリティウスが耳を貸すことはない。キリスト教徒の助けを借りることで、ローマの神々の怒りを招くことを恐れているのだ。だが娘が危篤状態になったとき、彼はついにルカに助けを求める。

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未来を花束にして

1月27日(金)公開 TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

100年前のイギリスで女性の参政権を求めて戦った人たち

未来を花束にして

 20世紀初頭のイギリス。子供の頃から洗濯工場で働くモーラは、配達の途中で過激な婦人参政権活動家たちのデモに巻き込まれる。当時のイギリスでは女性たちに参政権がなく、社会的な権利もほとんど保障されていない。権利を求める女性たちの声は、政治家たちに無視され、社会からも無視され、マスコミも完全に沈黙していた。活動家たちが時に暴力的な示威行動を起こすのは、自分たちの主張を「社会的な事件」として認知させるための作戦だ。モーラにとってこうした活動は他人ごとだったが、働いている工場で活動家の女性と知り合いったことで変化しはじめる。下院の公聴会で、工場労働の実態を証言することになったのだ。彼女の言葉に、議員たちも深い同情を示す。だが、結果は何も変わらなかった。変わったのは、モーラも活動化の一員として警察にマークされるようになったことだ。モーラは逮捕され、夫とは離婚。子供は奪われ、工場もクビになってしまう。

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