アイリッシュマン

11月15日(金)公開 全国ロードショー

デ・ニーロがスコセッシ映画に帰ってきた!

 これはひとりの男の回想だ。トラック運転手のフランク・シーランは、車のエンジン不調で立ち往生しているところで、たまたま通りがかった男に声をかけられた。立派な身なりの男は、手が油まみれになるのも厭わずエンジンに手を突っ込み、不調の原因をピタリと言い当てる。これがフランクとラッセル・ブファリーノの出会いだった。積み荷の横領で小遣い稼ぎをしていたフランクは、雇い主に訴えられたところを組合の弁護士に助けられ、彼の紹介でラッセルと再会する。すっかり意気投合した二人は家族ぐるみの付き合いをはじめる。ラッセルは裏社会で名の知れた顔役のひとりで、いつしかフランクはその右腕として、頼まれた「ペンキ塗り」の仕事を手掛けるようになった。「ペンキを塗る」は裏社会の隠語で、人を殺すことだ。そんな中でラッセルが自分の仕事仲間としてフランクに紹介したのが、全米トラック運転組合「チームスター」の会長ジミー・ホッファだった。

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楽園

10月18日(金)公開 全国ロードショー

これが田舎暮らしのリアルだ

 田園風景の中で、高齢化と人口減少が続く地方の小さな町。そこから1人の少女が消えた。小学校の帰り道にY字路で友人と別れた後、そのまま行方不明になったのだ。町中総出の捜索が行われるが、見つかったのは置き去りにされたランドセルだけだった……。それから12年後。消えた少女と最後に一緒にいた紡は、中古品の移動販売をしている豪士と親しくなる。豪士は子供の頃、母親と一緒に難民として日本にやって来た。友人も少なく、周囲からは孤立している。紡は豪士の孤独に、自分自身の孤独を重ね合わせたのだ。だが村祭りの夜、再び村で少女が行方不明になる。村人たちから「あいつが怪しい。12年前の事件もあいつが」と名指しされたのは豪士だった。人々は豪士が暮らす家に殺到し、帰ってきた豪士を追いかけ回す。そこにあるのは明確な殺意だった。豪士はあわてて近くの店に飛び込み、片言の言葉で助けを求めるが通じない。そして、凄惨な事件が起きる。

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スティング

10月18日(金)公開 午前十時の映画祭10 FINAL

詐欺師映画の古典であり最高傑作

 1936年、イリノイ州ジョリエット。昔ながらのすり替え詐欺で小金を稼いでいるルーサーとフッカーの詐欺師コンビは、かすめ取った封筒の中に思わぬ大金が入っていて驚いた。それは大物ギャング、ロネガンの賭場の売上金だ。ロネガンは見せしめのためルーサーを殺し、フッカーにも追っ手を放つ。辛くも逃げ出したフッカーはルーサーの詐欺師仲間ゴンドーフに会うためシカゴに向かい、そこでロネガンに報復するための計画を練り始める。ゴンドーフが声をかければ、昔の詐欺師仲間が集まってくる。情報屋曰く、「ロネガンは一か八かの博奕はせず、勝てるとわかる堅実な勝負しかしない。ポーカーをやっても最後はイカサマで必ず勝つ!」。ならば引っかける方法はある。コンドーフはロネガンのポーカー勝負にまぎれ込むと、ロネガン以上のイカサマ手口で見事に相手から大金をせしめた。だがその直後、フッカーは「あれはイカサマです」とロネガンに密告する……。

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ジョーカー

10月4日(金)公開 全国ロードショー

道化の仮面がひとりの男を救う

 アーサーは病気の母親の世話をしながら、いつかコメディアンになることを夢見ている。今は街頭宣伝のバイトをしているが、彼自身はこの仕事が嫌いではない。むしろ天職だとすら思っている。人を笑わせてハッピーにするのが、彼の生きがいなのだ。少なくとも、彼は自分でそう信じようとしている。そうとでも思わなければやりきれない現実が、彼の目の前にはあるからだ。街は犯罪に満ちあふれ、人々の心は荒んで、貧富の差は開く一方だ。アーサーのような底辺の人間には、上に這い上がるチャンスすらない。母は認知症を患い、アーサー自身は緊張すると笑いが止まらなくなる病気を抱えている。ある日、同僚から護身用にと銃を押し付けられたアーサーは、うっかりそれを仕事先の病院で落として仕事をクビになる。落ち込んだアーサーは地下鉄の中で笑いの発作を起こして3人組のエリート会社員たちに暴行され、とっさに持っていた銃で相手を射殺してしまうのだった。

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時計じかけのオレンジ

10月4日(金)公開 午前十時の映画祭10 FINAL

辛辣すぎて観客を凍り付かせるブラックコメディ

 高校生のアレックスは暴力に夢中になっている。夜な夜な仲間たちとミルクバー(麻薬入りのミルクを飲ませる店)に集まり、高揚した気分で街に獲物を探しに行く。彼らは薄汚いホームレスを袋叩きにしてウォーミングアップしたあと、他のギャンググループと乱闘して汗を流し、最後はお高くとまったインテリの家を襲撃して鼻歌まじりに女をレイプし、夫を叩きのめすのだ。仮病を使って学校を休み、レコード店で二人組の女の子をナンパして3Pセックスにふける。アレックスの強権体制に反抗的な仲間を暴力で屈服させたまではよかったが、強盗に入った家で女を殺したのはまずかった。仲間はさっさとアレックスを見捨てて逃げ出し、彼はひとり刑務所に入ることになった……。14年の刑を受けたアレックスは、牧師お気に入りの従順な模範囚を演じることで脱出の機会を狙っている。唯一のチャンスは、心理学の理論を応用した最新の矯正プログラムを受けることだった。

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

8月30日(金)公開 TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー

タランティーノが作った夢のハリウッド

 1969年のハリウッド。テレビ西部劇で一世を風靡した俳優のリック・ダルトンは、番組打ち切り後に何本かのB級アクション映画に出演した後、これといっためぼしい役にありつけないまま「往年のスター」扱いされつつあった。時々回ってくる役は、テレビ映画にゲスト出演する悪役ばかり。彼に忠誠を尽くす専属スタントマンのクリフ・ブースも、今では身の回りの世話をする雑用係のようなありさまだ。そんな彼の家の隣に最近引っ越して来たのは、『ローズマリーの赤ちゃん』の大ヒットで時代の寵児となっているロマン・ポランスキー監督と新妻シャロン・テート。成功の上り坂を駆け上がる者と、同じ坂をゆっくり下って行く者の悲しい対比だ。リックにはイタリア製西部劇への出演依頼があるが、ハリウッドで一度は時代の寵児となった男にとって、イタリアへの都落ちはプライドが許さない。同じ頃、ハリウッドでは危険なカルト集団が勢力を伸ばしつつあった。

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さらば愛しきアウトロー

7月12日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国公開

レッドフォード流アウトローの到達点

 1980年代初頭。警察で強盗事件を担当する刑事ジョン・ハントは、たまたま訪れた銀行で強盗事件に出くわす。ところがその手口があまりにも洗練されていたことから、ハ
ントはその一部始終を目撃しながら、それが強盗事件だとはまったく気付かなかった。犯人は高齢の白人男性と数人の仲間。犯行の手口や堂々とした態度から見て、彼らは他にも事件を起こしているはずだ。近隣の警察や周辺州にも問い合わせたところ、果たして同じ強盗団はこれまでにも数え切れないほど銀行を襲っていた。手口は様々だが、被害を受けた銀行の担当者は口々に「良い人そうだった」「幸せそうな人に見えた」と証言する。警察とマスコミはこの強盗犯たちに、「黄昏ギャング団」というあだ名を付ける。 州を越境する事件だったため、間もなく捜査権限はFBIに移管。ギャング団のリーダーは、フォレスト・タッカーという男だとわかった。だが彼らは、その後も犯行を重ねていく。

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約束

7月12日(金)公開 ミッドランドスクエアシネマ

男と女の映像詩

 公園のベンチで、中年の女がひとり誰かを待っている。だが待ち人は現れない。それでも女は待ち続ける。いったい誰を? 物語は2年前にさかのぼる……。女は列車に乗っていた。日本海沿いを北に向かって走る、混み合った特急列車だ。彼女の前の空席に、若い男がすべり込んでくる。顔の上に新聞を広げて眠りはじめた男。その新聞の見出しにある殺人事件の記事を見て、何かを思いだしたように女の顔が一瞬曇る。女が体を伸ばすため席を立つと、眠った男の顔から新聞が滑り落ちた。あわてて載せ直すがうまくいかない。女は自分の髪からヘアピンを1本抜くと、新聞を男の襟元に留める。やがて男は目を覚まし、新聞を留めていたヘアピンに気付く。「これあんたのかい?」。そんな風にして、男と女は出会った。やけに人懐っこく馴れ馴れしい若い男に女は苦笑しながら、それでもふたりは少しずつ距離を縮めていく。自分たちが恋に落ちるなど、まだ知らぬまま……。

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新聞記者

6月28日(金)公開 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

政権批判の話題作だが映画としては落第点

 東都新聞の女性記者・吉岡のもとに、1通の匿名FAXが送られてくる。それは国が進めている大学新設計画に関する資料だった。重大な内部告発だが、情報発信元がわからないのでは情報の裏取りが出来ない。情報の信憑性について検証すると共に、吉村は情報提供者の正体を探り続ける。同じ頃、外務省から内閣情報調査室(内調)に出向中の若手官僚・杉原は、新人時代の上司だった神崎に呼び出される。現在杉崎は内調の上司に命じられるまま、政府のためのネット情報工作に従事していた。そこでは情報の隠蔽や秘匿、敵対陣営へのネガティブ情報の流布、虚偽情報の捏造など、やりたい放題だ。かつて自分に国民のために働く官僚の心構えを説いてくれた神崎を前に、恥ずかしげに現在の自分の境遇をぼやいてみせる杉原。だがそんなかつての部下に、「皮肉なものだ。かつての自分に叱られるとは」と悲しげな笑みを浮かべる神崎。彼はその直後に、自殺してしまった。

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運び屋

3月8日(金)公開 全国ロードショー

イーストウッド10年ぶりの監督・主演作

 デイリリーの栽培農家として、世界中の愛好家たちに名前を知られていたアール・ストーン。自慢の花や苗を持って各地の品評会や即売会を駆け回っていた彼だったが、インターネット販売に押されて売れ行きは低迷。やがて自慢の農園や家も手放す羽目になった。妻とはもうだいぶ前に離婚し、子供や孫とも音信不通状態。だが結婚する孫娘のために、何もしてやれないのは心残りだ。そんな彼に、ひとつの仕事が舞い込んでくる。ある場所から別のある場所に、荷物を運ぶだけの仕事。荷物の中身については、見ざる、聞かざる、言わざるのお約束だ。仕事の依頼主は麻薬組織のメンバーたち。長年無事故無違反で安全運転を心がけてきた高齢のアールが、オンボロのトラックで荷物を運んでも警察に疑われることはまずなかろうと見込んでのことだ。目論見は大成功。組織は無事に荷物を運び、アールも思いがけない大金を手にした。彼はすっかり、この仕事に味を占めてしまう。

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