劇場版 ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉

5月24日(金)公開 全国ロードショー

熱きスポ根ドラマの巧妙なパスティーシュ

劇場版 ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉

■あらすじ

 レース場で先輩ウマ娘たちの走りを見て感激した若きウマ娘ジャングルポケット(ポッケ)は、自分も誰よりも速く走りたいと心を震え立たせる。トレセン学園に入学し、才能を花開かせるポッケ。だがその行く手に、アグネスタキオン(タキオン)というライバルが現れる。

 闘争本能の赴くままレースに挑むポッケに対し、タキオンはレースを通じて「真理」を追い求める求道者だった。徹底した分析と科学的トレーニングによって、ポッケとタキオンは共に無敗のままレーテで激突。だがこの最初の勝負は、タキオンの勝利となった。

 一度負けたからといって引っ込むポッケではない。その後の他のレースで順調に勝ちを重ねるポッケは、最強の座を賭けて再びタキオンに挑む。しかしこのレースでも、ポッケは再びタキオンの後塵を拝することになった。しかもタキオンはこのレースを最後に無期限休場……。

 この日から、ポッケはタキオンの幻影と戦い続けることになる。

■感想・レビュー

 スマホやPC向けのゲームアプリを中心に、コミック、CD、アニメなどに展開してきたメディアミックスコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」の劇場版長編アニメーション映画。僕はこのゲームも先行する他作品もまったく未見だったが、今回の映画だけでも楽しめるとSNSにあったのを信用して観ることにした。

 確かに映画だけでも話はわかる。「ウマ娘」の何たるかという世界観がイマイチ良くわからなかったりするが、このへんはボンヤリと「そういうものだ」と飲み込んでしまえば、話はきわめてシンプルでわかりやすい。これは昭和世代には懐かしい、熱血スポ根ドラマのパスティーシュなのだ。

 スポ根作品はもちろん今でもある。大ヒットした『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)だってスポ根だし、マンガの世界には「はじめの一歩」みたいな超長編作品もある。だがこうした最近の作品が細やかな選手心理や、複雑な人間関係、試合での駆け引きの妙味などを細かく描き込んでいるのに対して、この『ウマ娘 新時代の扉』はもっと単純で熱い。細かなディテールより、図式化されたキャラクター配置で全体を一気に動かす勢いが身上の作品になっている。

 例えば「熱血型の主人公 VS 頭脳派のライバル」という図式は、これまでどれだけ多くの作品に登場しただろう。わかりやすいところでは「ロッキー VS ドラゴ」みたいなものだ。ライバルが勝ち逃げするように表舞台から去り、その幻影を追って主人公が泥沼のスランプにはまり込むという展開は、「あしたのジョー」以来の定番パターンではないのか。

 僕は今回の映画のストーリーを古くさいと思った。熱いしパワフルだけれど、古いことは古い。しかしその古くささをカバーしてしまうのが、「ウマ娘」という新しい意匠なのだろう。作り手もよく心得ている。これを「ウマ娘」以外のスポーツでやれば、古くさくて見ていられなかったと思う。

ユナイテッド・シネマ豊洲(3スクリーン)にて 
配給:東宝 
2024年|1時間48分|日本|カラー 
公式HP:https://movie-umamusume.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt30648377/

小説 劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』 (角川文庫)

Cygames(原著), 吉村 清子(著), 小針 哲也(著), 秋津 琢磨(監修)

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