マッドマックス:フュリオサ

5月31日(金)公開 全国ロードショー

充実のアクション描写に大満足

マッドマックス:フュリオサ

■あらすじ

 戦争と気象変動によって荒廃し、暴力が支配するようになった世界。わずかに残された緑の地からバイカー軍団の兵士に誘拐された少女フュリオサは、最愛の母を目の前で殺され、そのままバイカー軍団の首領ディメンタスに囚われてしまう。

 バイカー軍団はイモータン・ジョーが支配する水源の街「シタデル」にたどり着くが、ジョーは多くのウォーボーイズに守られている。ディメンタスはシタデルのエネルギー供給地であるガスタウンを攻略し、その支配者としてイモータン・ジョーと平和協定を結ぶ。フュリオサはジョーの子産み女候補として、シタデルに送られる。

 それから数年。子産み女が幽閉されている部屋から脱出したフュリオサは、優秀なメカニック担当として周囲から一目置かれるようになっていた。一方ガスタウンは、ディメンタスの支配に対する不満から部下や労働者たちの暴動が起きる寸前。イモータン・ジョーは、ディメンタスとの決戦に向けて動く。

■感想・レビュー

 2015年に製作公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚で、シタデルの女性大隊長フュリオサを主人公にしたスピンオフ作品。フュリオサは前作ではシャーリーズ・セロンが演じていたが、本作ではNetflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」のアニャ・テイラー=ジョイにバトンタッチした。

 『マッドマックス』シリーズと世界観を共有している作品だが、この映画にマックスは登場しない。(それらしい人物が出てこないわけではないが、物語に深くからむ形にはならない。)物語の主人公はフュリオサだが、彼女はイモータン・ジョーとディメンタスの戦いというより大きな物語の一部だ。

 本作の実質的な主役は、バイカー軍団を率いるディメンタスだと思う。暴力が支配する世界の中で、自分の野心と才能だけで一軍の将となった男。彼を見ていると、三国志の英雄たちもひょっとしたらこんな人物だったのではないかと思えてくる。演じているのは『マイティ・ソー』シリーズのクリストファー・ヘムズワースだ。

 冷酷で残虐非道なディメンタスだが、ヘムズワースが演じることで爽やかなナイスガイになっている。フュリオサにとっては親の仇で殺しても飽き足らない憎い奴だが、画面に出てくるデュメンタスはあまり恐くない。基本的に陽性のキャラクターで裏表がなく、スポーツ少年がそのまま成長したような無邪気さを感じさせる。これは対立するイモータン・ジョーの、陰湿なキャラクターとの対比を際立たせる意味もあるのだろう。

 数あるアクションシーンの中でも、誘拐されたフュリオサを追って、彼女の母がディメンタスの本拠地まで追跡と狙撃を繰り返しながら接近していく序盤の緊迫感は素晴らしい。この一連のシークエンスで、本作品のトーンは定まった。これと対になるのが、終盤でフュリオサがディメンタスを追い詰めていく場面。これも最後まで楽しませる。2時間半はあっと言う間だった。

(原題:Furiosa: A Mad Max Saga)

TOHOシネマズ日比谷(スクリーン9)にて 
配給:ワーナー・ブラザース映画 
2024年|2時間28分|オーストラリア、アメリカ|カラー 
公式HP:https://wwws.warnerbros.co.jp/madmaxfuriosa/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt12037194/

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