しあわせへのまわり道

8月28日(金)公開予定 TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開

人生を変えたくなったら車の免許を取ろう

しあわせへのまわり道

 人気書評家ウェンディの暮らしは、20年以上連れ添った夫に突然離婚を突きつけられて一変する。「夫はいつか戻ってくる」。そう信じたい彼女の気持ちとは裏腹に、夫は私物の整理や財産分与など、法的な離婚手続きを着々と進めて行く。マンハッタンのアッパー・ウェストサイドの広いアパートに、ひとり取り残されてしまったウェンディ。久しぶりに帰ってきた大学生の娘は、「家に閉じこもっていないで外に出た方がいい」と母にアドバイス。「でも車がないわ。いつもパパに運転してもらってたから、わたしは免許も持ってないのよ」。彼女は自分が免許を取ることで、夫との関係が完全に切れてしまうことを恐れているのだ。だが夫婦関係の破綻は明らかだ。彼女は忘れ物を届けてくれたインド人のタクシー運転手ダルワーンから、免許取得のための路上教習を受けることに決める。彼はインドから亡命してきたシク教徒で、ちょうど故郷から花嫁を迎えるところだった。

 主人公のウェンディを演じるのは、数々の映画で活躍しているパトリシア・クラークソン。彼女はきつい性格の強い女性を演じることが多いのだが、この映画でも彼女に付きまとうそうした既存のイメージを十分に活用している。ウェンディは最初に映画に登場したときから泣きわめき、狼狽し、茫然自失で何も手につかなくなってしまう。しかし映画を観ている人は、この騒ぎが起きる前のウェンディの姿を容易に想像できるのだ。それはこれまで他の映画で観てきた毅然としたパトリシア・クラークソンの姿。この映画は自分を見失っていた彼女が、誰もが知っている「パトリシア・クラークソンのセルフイメージ」を取り戻していく物語になっている。だがその過程は決して一直線ではなく、紆余曲折もあれば堂々巡りもある。クラークソンがベテランらしい細やかな感情表現で、絶望から立ち直っていくヒロインを豊かに表現しているのはさすがだと思う。じつに上手いものだ。

 彼女の心の旅のパートナーになるダルワーンを演じるのは、これまた大ベテランのベン・キングズレー。もう70歳過ぎのおじいちゃん俳優だが、今回の役はヒロインと同年配、おそらく50歳前後ぐらいの設定ではなかろうか。彼が自動車の助手席に座って人生哲学的な言葉を吐くのはじつに堂に入っているし、インドではインテリだったという設定も無理なく納得できる配役だ。ダルワーンは他人であるウェンディの気持ちには細やかな配慮ができるのに、異教の地に単身嫁いできた自分の妻の気持ちには寄り添えないという男で、このあたりは「日本男児」にも同じようなところがあるかもしれないと思ってながめていた。結局これは妻に対する甘えなのだ。孤独な妻が雑貨店で同じインド系の女性に出会い、あっという間に地域のインド人コミュニティの一員になってしまう場面は見ていて本当にホッとさせられた。この妻を演じたサリター・チョウドリーもいい女優だと思う。

(原題:Learning to Drive)

松竹試写室にて
配給:ロングライド パブリシティ:レオ・エンタープライズ、ブラウニー
2014年|1時間30分|アメリカ|カラー|アメリカン・ビスタ|5.1ch
公式HP: http://shiawase-mawarimichi.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3062976/

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