イン・ザ・ハイツ

7月30日(金)公開 全国ロードショー

移民社会アメリカの今を描くミュージカル

映画『イン・ザ・ハイツ』のチラシ画像

■あらすじ

 ニューヨークのマンハッタン島北端にあるワシントン・ハイツ。そこで小さなコンビニを営んでいるのが、ドミニカ移民の青年ウスナビだ。彼はいつも店に現れるヴァネッサに片思い中。しかしデートに誘う度胸がないことを、幼なじみのベニーや従弟のソニーにからかわれている。彼の夢は、かつて両親と過ごした生まれ故郷のドミニカに戻ること。そのためこつこつ貯金し、準備も進めていた。

 そんな街に、カリフォルニアの大学に通っているニーナが戻ってくる。幼い頃から成績優秀だった彼女は、人々の期待を一身に集めて街を出た。だが戻って来た彼女は、その大学を中退する決意をしていたのだ。学費工面のため、父親が大変な苦労をしていることも理由のひとつ。だがそれ以上に、ニーナには大学で耐えられない出来事があった。

 ウスナビはソニーの機転で、ヴァネッサとデートの約束を取り付けることに成功。だがデートの最中、街が大停電に見舞われる。

■感想・レビュー

 2008年にブロードウェイで上演され、その後は日本も含む世界中で上演されている同名ミュージカルの映画版だ。多くのミュージカル映画がそうであるように、本作もオリジナルの舞台版に沿いながら、あちこちに改変やオリジナル要素を入れている。監督は『クレイジー・リッチ!』(2018)のジョン・M・チュウ。

 物語の舞台になっているワシントンハイツは1980年代から90年代にかけて、麻薬取引やギャング同士の銃撃事件が相次ぐ危険な地域だったという。しかし最近は再開発が進んで家賃が上昇し、古くからの住人がより家賃の安い周辺地区に移住することも多い。映画はこうした地域の現実を取り込みつつ、ドミニカやキューバ、プエルトリコなど、カリブ海の貧しい島々からアメリカに渡ってきた移民たちの歴史を描き出いている。

 ニューヨークに住む貧しい移民青年たちの群像劇という点で、これは『ウエスト・サイド物語』(1961)に似ていると思う。劇中でこれに直接言及されることはないと思うが、主人公が「酔っ払ったチタ・リヴェラ」と評される場面がある。リヴェラは『ウエスト・サイド物語』の原作ブロードウェイ初演で、アニタ(映画ではリタ・モレノが演じた)を演じたミュージカル女優だ。

 『ウエスト・サイド物語』はポーランド系とプエルトリコ系移民背年たちの対立抗争を描いているが、本作にもプエルトリコ系の住民たちが出てくる。2000年代に原作上演された『イン・ザ・ハイツ』は、1950年代に原作上演された『ウエスト・サイド物語』の遠い遠い後日談のような性質の映画。そこに描かれている移民の問題は昔も今も切実で、二つの世界は遠いようでじつはとても近い。

 今年はスピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』も公開される。『イン・ザ・ハイツ』に描かれている現実を踏まえて、スピルバーグがどんな映画を撮っているかを楽しみに待ちたい。

(原題:In the Heights)

ユナイテッド・シネマ豊洲(12スクリーン)にて 
配給:ワーナー・ブラザース映画 
2021年|2時間23分|アメリカ|カラー|2.39 : 1 
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/intheheights-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt1321510/

イン・ザ・ハイツ

イン・ザ・ハイツ

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ワーナーミュージック・ジャパン (2021-07-21T00:00:01Z)
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イン・ザ・ハイツ」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 『サマーフィルムにのって』はいい映画 | 新佃島・映画ジャーナル

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