エジソンズ・ゲーム

6月19日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

巨人ウェスティングハウス!

 1880年代のアメリカ。列車用空気ブレーキの発明で事業家としても成功していたジョージ・ウェスティングハウスは、エジソンの白熱電球に注目していた。白熱電球は世界を変える素晴らしい発明だ。しかしエジソン社が供給している直流電源システムでは、大規模な電力供給網を作ることができない弱点がある。この弱点を克服した交流発電機を入手・実用化させていたウェスティングハウスは、エジソンと手を結ぶことで全米規模の電気事業を作り上げられると考えた。だが直流にこだわるエジソンはこの提携話を拒む。こうして直流のエジソン方式と、交流のウェスティングハウス方式が、市場の覇権を争う「電流戦争」が勃発した。当初はエジソンの名声でリードしていた直流陣営だが、エジソン社で交流の研究を阻まれた天才科学者ニコラ・テスラがウェスティングハウス陣営に参加する頃から、徐々に劣勢に立たされるようになる。市場は交流派に大きく傾いていく……。

 映画に描かれた電流戦争は実話に基づいているが、この映画に描かれたすべてが歴史のありのままの再現というわけではない。例えば大きな変更点として、有名な蓄音機の発明と市場投入時期が電流戦争勃発後に移動されている。じつはエジソンの名声を決定的にしたのが、1878年に発明された蠟管型蓄音機。発熱電球の実用発明はその翌年だ。もっとも伝記映画というのはすべて「実話をもとにしたフィクション」なので、こうした変更にいちいち目くじら立てる映画ファンはいないだろう。映画ファンとしては、むしろ、エジソンが関わった映画の発明についてのエピソードがあまりないのが寂しい。ところどころに臭わせてはいるのだが、肝心のキネトスコープが出て来ないのだ。映画のクライマックスであるシカゴ万博に、エジソンはキネトスコープを出品していた。マイブリッジの連続写真だけ見せて、キネトスコープを見せてくれないなんて、何とも殺生な映画だと思う。

 映画の邦題は『エジソンズ・ゲーム』だが、原題の『The Current War』は「電流戦争」のこと。この映画の主人公は、エジソンよりむしろウェスティングハウスではないだろうか。エジソンは自分の名前をブランド化し、部下の発明品も、他社から買い取った発明品も、すべてエジソンの商標を付けて売りまくった。(映画もそうした発明品のひとつだ。)一方ウェスティングハウスは「電流戦争でエジソンに勝った男」として知られることが多いのだが、エジソンに負けず劣らず有能な発明家であり、エジソン以上の会社経営者だった。エジソンは発明家の代名詞として、子供向けの偉人伝や大人向けの評伝、ビジネス書などで、今も多くの人を引き付けるが、ウェスティングハウスの伝記本は日本ではほとんど売られていない。本作はそんな知られざる巨人の人柄を、フィクションを織り交ぜながらも魅力的に描いている。地味ではあるが、テンポの良い実録映画だ。

(原題:The Current War: Director’s Cut)

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン3)にて 
配給:KADOKAWA 
2019年|1時間48分|アメリカ、ロシア、イギリス|カラー|2.39 : 1 
公式HP: https://edisons-game.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt2140507/

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