めまい(4K上映)

12月17日(土)公開 午前十時の映画祭7(GROUP A)

ヒッチコック映画の中でも一二を争う病的な映画

vertigo

 犯人の追跡中に屋根から転落しかけ、自分に手を差し出した警官が転落死する姿を見てしまったことで、ジョン・ファーガソンは強度の高度恐怖症になった。刑事引退を決意した彼は、学生時代の友人エルスターから妻を尾行してほしいという依頼を受ける。エルスターの妻マデリンはここ最近亡霊に取り憑かれたように、あちこちを車で徘徊しているのだという。しかもその間の記憶をすっかり失っている。彼は医師に相談する前に、まず妻がどこで何をしているのかを知りたいというのだ。渋々この仕事を引き受けたジョンだったが、尾行の対象となるマデリンは物憂げな表情を浮かべる金髪の美女。数日尾行するうちに、ジョンはすっかり彼女に心を奪われてしまった。少しずつわかってきたのは、彼女が自殺した曾祖母カルロッタの足跡をなぞっていることだ。カルロッタは26歳で自殺したが、マデリンもちょうど同い年。彼女は尾行するジョンの目の前で、海に飛び込んだ。

 ヒッチコックの代表作のひとつで、『サイコ』(1960)同様のカルトムービーになっている作品だ。要するに好きな人はめちゃくちゃに好きだが、ピンと来ない人にはどこがいいのかさっぱりわからない。この映画を特徴づけているのは、構成のアンバランスさだ。それがこの映画を、カルトムービーにした理由かもしれない。何しろこの映画は殺人ミステリーなのに、問題の殺人事件が映画の後半にならないと起こらない。2時間8分の映画で、ヒロインが死ぬのは1時間17分もたってからだ。普通の映画ならこれをがんばって前半の3分の1ぐらいに持って来て、後半は彼女の死を巡る謎解きにあてるだろう。だがこの映画は謎解きには興味がなく、ヒロインの死からたった20分で謎の答えをあっさり観客に明かしてしまう。映画前半ではさんざんヒロインの先祖の因縁話をやっていたくせに、彼女が死んだ瞬間、それらがすべて放棄されてしまうのも不思議な感じがする。

 おそらくヒッチコックは、最初から幽霊話には興味がなかったのだ。だから映画の前半でもまったくそこに執着しない。監督がこの話に執着していないから、主人公が幽霊話を信じかけているのか否かもよくわからない。よくわからないまま、主人公はヒロインと愛し合い、彼女の死で精神が崩壊し、いつの間にか回復して、女友達のミッジは物語からあっさり退場し、新ヒロイン(?)のジュディを主人公が追い詰めていく後半に突入して行く。もうグシャグシャなのだ。てんで物語映画としての体をなしていないのだ。しかしそれが、この映画の唯一無二の個性にもなっている。この映画でもっとも恐ろしいのは、高所恐怖症でも、幽霊話でも、殺人事件でもなく、死んだ女に取り憑かれてしまった主人公のジョン・ファーガソンなのだ。彼は死んだ女に恋し、彼女によく似た別の女を、死んだ女そっくりに仕立て上げていく。彼は病院を退院した後も、いまだ心を病んでいるのだ。

(原題:Vertigo)

TOHOシネマズ名古屋ベイシティ(プレミア1)にて
配給:東宝東和
1958年|2時間8分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ
公式HP: http://asa10.eiga.com/2016/cinema/625.html
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt0052357/

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