アイヒマンを追え ナチスが最も畏れた男

1月7日(土)公開 Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

ナチス高官アイヒマン逮捕の舞台裏

アイヒマンを追え ナチスが最も畏れた男

 1950年代後半のドイツ・フランクフルト。自宅の風呂場で眠りこけた検事長のフリッツ・バウアーは、浴槽で溺死する寸前に運転手に救出されて病院に搬送される。命に別状はなく、1週間後には仕事に復帰するバウアー。だが表向き彼に見舞の言葉をかけながら、彼が死ななかったことを残念に思う者たちも多い。戦後12年で目覚ましい復興を遂げたドイツだが、政府や官公庁の主要ポストに座っているのはかつてのナチス幹部たちなのだ。彼等の旧悪は隠蔽され、罰せられることはない。そんな中で、ナチスの高官たちを追うバウアーの捜査は厄介な存在なのだ。ひとりのナチス高官の逮捕で、他の元幹部たちまでが芋づる式に検挙される可能性がある。そんなわけで、バウアーは他の検事たちの妨害や、有形無形の脅迫にさらされているのだ。そんな彼のもとに、アルゼンチンから1通の手紙が届く。それは逃亡中のナチス高官アドルフ・アイヒマンについての情報だった。

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天使にショパンの歌声を

1月14日(土)公開 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

学校を守ろうとする修道女の奮闘

天使にショパンの歌声を

 1960年代。カナダのケベックに、カトリックの女子修道会が営む寄宿制の音楽学校があった。校長はもとコンサート・ピアニストのオーギュスティーヌ。彼女の教育方針に従って、学校には音楽を愛する多くの修道女と生徒が集まっている。だがこの時代、教会は社会の世俗化という荒波に大きく揺り動かされていた。政府は公教育を充実させ、カトリック系の学校からも多くの生徒が公立学校に転校している。教会は第2バチカン公会議後の改革で、ミサの方式や修道会のあり方が大きく変化している。オーギュスティーヌの学校は、修道会の経費削減を理由に閉校の瀬戸際にある。オーギュスティーヌは学校の存続をはかるため、マスコミを集めたイベントを開催し、広く社会に向けて学校の必要性をアピールした。同じ頃、学校にはオーギュスティーヌの姪アリスが転入してくる。彼女はピアニストとして天性の素質を持ちながら、自分の殻に閉じこもりがちな問題児だった。

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SUPER FOLK SONG ピアノが愛した女。[2017デジタルリマスター版]

1月6日(金)公開 新宿バルト9ほか全国公開

リバイバル公開された伝説の音楽ドキュメンタリー映画

SUPER FOLK SONG ピアノが愛した女。

 1992年の冬。シンガーソングライターの矢野顕子が、新しいアルバムの制作に取り組んでいた。アルバムタイトルは「SUPER FOLK SONG」。ピアノ弾き語りの一発録りにこだわったこともあり、膨大なNGテイクが出る。完全主義者の矢野はわずかなミスタッチも許さず、何度もリテイクを繰り返す。だが彼女のことをよく知るスタッフたちは、そのことに少しも異議をはさまない。アーティストとしての彼女を100%信頼しているのだ。自ら作詞や作曲も行う矢野だが、今回のアルバムではすべての曲がオリジナルではなくカバーだ。この映画では、はちみつぱいの「塀の上で」、大貫妙子の「横顔」、小室等の「夏が終る」、THE BOOMとの矢野の「それだけでうれしい」、糸井重里の「SUPER FOLK SONG」、THE BOOMの「中央線」、セルフカバーの「PRAYER」などの収録風景と、関係者のインタビューが収録されている。

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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

2016年12月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテにて先行公開
1月14日(土)より全国公開

テロと戦うことでテロに屈服するという逆説

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

 イギリス軍諜報部のキャサリン・パウエル大佐は、多くの犠牲を払いながら長年追い続けていたテログループ幹部の居場所を突き止めた。場所はケニアのナイロビだ。現地の軍特殊部隊と協力して捕獲作戦を決行しようとした矢先、テロリストたちはグループの支配地域にある別の隠れ家に移動してしまう。敵の支配地域で特殊部隊を動かすことは出来ない。だがこのチャンスを逃せば、次にいつ彼等を見つけられるかわからないのだ。パウエル大佐と国防省のベンソン中将は、無人機を使ったミサイル攻撃を主張する。だがロンドンの会議室に集まった政府の閣僚たちは、この計画に難色を示す。捕獲作戦がミサイル攻撃による暗殺に変更された場合、法的な妥当性や政治的なリスクが未検証だったからだ。政治家たちは攻撃に怖じ気づき、決断を迫る中将の前で責任を押し付け合う。その頃アメリカのネバダ州にある米軍基地では、無人機の新人パイロットが攻撃命令を待っていた。

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本能寺ホテル

1月14日(土)公開 TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー

このアイデアならもっと面白くなるでしょ?

本能寺ホテル

 婚約者の両親に会うため京都を訪れた倉本繭子は、ホテルの予約ミスから、町外れの「本能寺ホテル」に泊まることになった。アールデコ風のレトロなホテル。繭子がエレベーターに乗って自分の部屋に向かうと、降りたところは天正10年6月1日の本能寺だった。有名な「本能寺の変」は明日に迫っている。繭子は事情がよくわからないまま現代と過去を何度が往復し、織田信長本人とも直接言葉を交わすようになる。「脅かすようにして他人から宝物を取り上げるのはよくありません」「あなたの周囲にいる人たちは怯えるばかりで少しも幸せそうには見えません」など、天下人の信長に対してズケズケとものを言う繭子。だが信長と親しくなったからには、あのことを本人に告げるべきではないのか? それは明智光秀の謀反によって、間もなく信長の命運がつきるということだ。しかしそれを本人に告げれば、歴史が大きく変わってしまう。繭子はどうすればいいのだろうか。

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僕らのごはんは明日で待ってる

1月7日(土)公開 TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

コクも歯ごたえもない薄味の青春ラブストーリー

僕らのごはんは明日で待ってる

 高校生3年生の葉山亮太は、いつも教室でたそがれている。中学生の時、たったひとりの兄が死んでからはずっとそうだ。クラスに友人はいない。読む本と言えば、人が死ぬ小説ばかり。暗い。暗すぎる。当然、クラスの中ではひとりだけ浮いている。いや、浮いているのではなく、ひとりだけ沈んでいるのだ。そんな亮太に、クラスメイトの上村小春が声をかけてきた。体育祭のリレー競技で、亮太と小春が米袋ジャンプのペアをやることになったのだ。体育祭に向けての練習をする中で、少しずつ打ち解けていく亮太と小春。ふたりの健闘もあって、みごとチームは勝利。小春は亮太に告白し、ふたりは付き合うことになった。大学は別々になったが、その後も順調に愛を育んでいくふたり。短大卒業後に小春は保育園の保母さんになり、翌年には亮太の就職も決まった。だがその直後、小春は突然亮太に別れを告げる。理由はまったくわからない。だが小春の決意は固かった……。

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MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間

12月23日(金・祝)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショー

ドン・チードルが帝王マイルス・デイヴィスを熱演

MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間

 1979年。「帝王」の異名を持つジャズ界の巨人、マイルス・デイヴィスが活動を停止してから既に5年がたっていた。ローリングストーン誌の記者デイヴ・ブレーデンは、帝王復活の噂話を聞きつけて単身マイルスの自宅に押しかける。だが彼がそこで見たのは、乱雑に散らばった部屋の中で麻薬に溺れる男の姿だった。彼は麻薬を買う金欲しさにレコード会社に金の無心をしており、それが演奏活動再開の噂につながったのだ。何とかマイルスの懐に潜り込んだデイブは、隠遁中に彼が作成したレコーディングテープを見つけ、それを盗んでレコード会社に売りつけようと考える。だが彼が盗み出す前に、テープは大物プロデューサーに盗み出されてしまった。テープの紛失に気づいたマイルスは、デイヴを連れてテープを追跡する。麻薬と酒の影響で過去と現在が混濁する脳裏に思い浮かぶのは、10年以上前に別れた最初の妻、フランシス・テイラーとの出会いと別れだった。

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バイオハザード ザ・ファイナル(2D)

12月23日(金)公開 TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー

人気SFアクションシリーズの完結編!

バイオハザード ザ・ファイナル

 アリスが目を覚ましたとき、周囲には無人の廃墟が広がっていた。場所はワシントンD.C.。アンデッドたちとの死闘の末、今回もまたアリスだけが唯一生き延びたらしい。あてもなくさまようアリスは、迷い込んだ施設で朽ちかけたコンピュータ端末から呼びかけるレッドクイーンの声を聞く。「48時間以内にT-ウィルスに対抗できる抗ウィルス剤を散布しないと人類は死滅する。抗ウィルス剤はラクーンシティ地下のハイブにある」というのだ。今まで人類を滅ぼすために力を振るってきたレッドクイーンが、なぜ今になってアンブレラ社を裏切るようなことをするのか? じつはAIであるレッドクイーンには、もともと2つの役目があった。ひとつは人類を守ること。もうひとつはアンブレラ社に従うことだ。このふたつは矛盾するが、その場合はアンブレラ社の命令が優先される。だがレッドクイーンはアンブレラ社を出し抜き、アリスに秘密の情報を伝えてきたのだ。

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ヒッチコック/トリュフォー

12月10日(土)公開 新宿シネマカリテほか全国順次公開

名著「映画術」を補完する作品

ヒッチコック/トリュフォー

 1966年。ヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督のひとりフランソワ・トリュフォーが聞き役となり、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックを相手に長時間の取材を行ったインタビュー本「Hitchcock/Truffaut」が発売された。日本では「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」のタイトルで知られるこの本によって、アメリカでは職人的な娯楽映画の監督と考えられていたヒッチコックは世界的な「映画作家」のひとりとなる。またこの本は、これから映画監督を目指そうとする世界中の若者たちにとってのバイブルとなった。この映画は当時の取材に使われた録音テープや写真をもとにして歴史的なインタビューを再現すると共に、完成した本の中ではスチル写真で取り上げられているヒッチコック作品の名場面を映画の引用という形で補完している。さらにスコセッシを筆頭とする10人の映画監督たちが、この本の影響について語っている。

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聖杯たちの騎士

12月23日(金・祝)公開 ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

どこをどう切ってもテレンス・マリックの世界

聖杯たちの騎士

 ハリウッドの脚本家として成功への道を歩み始めたリックは、自分の過去と現在を振り返る。頑固な父親と弟の確執、そして女たちとの生活のことだ。彼が愛した女たちは、ある者は心に突き刺さる深い痛みを、ある者は甘い思い出だけを残して、みんな彼のもとから去ってしまった。ハリウッドでの生活。ラスベガスの退廃的な風景。雄大なアメリカの自然。突然の成功に最初は戸惑っていたリックだが、すぐにその生活に馴染んでいく。ハリウッド人種の豪華なパーティーも、プール付きの豪邸も、今の彼にとっては日常の風景だ。その中でお遊びで付き合った女たちもいれば、互いに真剣な気持ちで付き合ったがゆえに、今も心に鋭いトゲのような思いが残る女性もいる。リックは何かを求めていたはずだ。何かを求めて、彼はハリウッドにやって来た。だが自分が何を求めているのかすら、彼にはもうわからなくなっている。答えのヒントを与えてくれるのは、女たちだろうか。

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